スペイサイド
ハイランド地域のこの部分は、インヴァネスとアバディーンという2つの町の間にあり、花崗岩の山々から大麦を産する肥沃な緑地までをふくんでいる。この地域は多数の川からなる河川系の流域であり、その主要な川はスペイ川である。スペイサイド地域は、厳密な境界をもつものではないが、このスペイ川をはるかに越えて広がっている。最大限広く考えれば、西はフィンドーン川から東はデベロン川にまで達するといってよいかもしれない。
花崗岩の山々は軟水を生み、その水は多くの場合ヘザーが生えた湿地を流れている。蒸留と熟成は涼しい場所を選んで行われる。スペイサイドのシングルモルトは一般に、エレガントで、花のようで、ヘザーハニーのような特徴、そして、抑制された芳しいピーティさによってしられている。
この共通点を別にすれば、スペイサイドのシングルモルトには、2つの両極端が、ある。すなわち、マッカラン、グレンファークラス、アベラワーを代表とするビッグでシェリーっぽいタイプと、ノッカンドオ、グレン・グラント、グレンリベットに示されるようなどちらかといえば繊細なスタイルをもつものである。
リベットの谷
スペイサイドのなかで、リベット川のグレンは、標高が高くまわりから隔てられ、寒冷の土地であり、その名前をそこから離れたところの蒸留業者が長年にわたって名乗るほどに有名であったが、実際の効果は薄れつつあり、誤解を招くとして、次第に放棄されつつある。ザ・グレンリベットと名乗る事が出来る蒸留所はただ一つである。他にブレイブァルとタムナヴーリンだけが、この谷で生産されている。これらはすべてデリケートなモルトウイスキーであり、その特徴はおそらく、蒸気の凝縮時とスピリットの熟成期間における寒冷な気候の影響によるものであろう。
その他のグレン
その他のグレン、たとえばフィディック川や、ロッシー川のグレンなどには、ある種の特徴を共有するモルトが見出されると言うことも出来るであろう。ほとんどの谷は「グレン」という名前でよく知られているが、大きめの谷を意味するストラスという表現を使用する場合もある。
アイランズ
伝統的には、「ハイランド」という言葉は、アイラを除くすべての島々を含めて使うとされてきた。熱狂的ウイスキー愛好家であれば、程度の差こそあれ、ある独特なスタイルのウイスキーが作られるのは、すべてアイランズ諸島においてであると論じるだろう。とりわけ有名なのは、アイラ島と半島部に位置するキャンベルタウンの蒸留所である。海岸沿いの若干の蒸留所も、クライヌリッシュがもっとも明白な例だが、この範疇に入ることになる。
この島風の特徴がもっとも強く現れるのは、オークニー島、アイラ島、そしてキャンベルタウンの一部におけるように、その土地のピートを使ってモルトが作られる場合である。風の強いこれらの島からとれるピートは、それ以外の影響を取りこんでいる。とりわけ、オークニー島においては、海水のような塩っぽさであり、アイラ島では薬品っぽい海藻というような影響である。
ハイランド
圧倒的な巨大な産地出るあるハイランドは、当然のことながら広範な変化を有している。ハイランドの西側部分は、少なくとも本土内においては、ほんのわずかの蒸留所が散在しているだけであり、そのすべての特徴を一言で表現することは困難である。若干の蒸留所は荒野のなかにあり、それらに共通の特徴があるとすれば、それはしっかりとしていてドライな特徴を持ち、ピーティさと塩っぽさを持っている事である。そのような蒸留所の中ではオーバンがもっとも著名である。ハイランド最北部には、際立ってスパイシーな特徴をもつウイスキーがいくつかある。この特徴は、おそらく、砂岩とクローバーときわめて穏やかな海風に由来するものであろう。グレーンモーレンジは良い例である。これに比べて外部から隔てられたところにある東部ハイランド、およびスコットランドの中部地域、南ハイランドは、数多くのフルーティなウイスキーを産している。
アイラ
アードベッグ、ラガヴーリン、ラフロイグ、ボウモアのような海のフレーバーをもつモルトを産すること、そして、わずか40キロほどの長さしかない小さな島に非常の多くの蒸留所があるという2つの理由によって有名な島である。近年においては、その蒸留所のうち6つが常に、さらに1つが間欠的に稼働している。2つの蒸留所は独自のモルティングを行っているが、ポートエレンのモルティング工場はこの島のすべてのウイスキーに麦芽を供給している。
キャンベルタウン
キンタイア半島は幅が狭くて、海に突き出ており、キャンベルタウンにある蒸留所は、際立って塩っぽいウイスキーを生産する。かつてはここに30以上の蒸留所があったが、ここしばらくは、ただ一つが残っていただけである。それは、スプリングバンクであり、独自の有名なモルトと、よりピーティなロングロウ、ヘーゼルバーンを作っている。現在グレンスコシアも再開されている。